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「ファースト・マン 初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生」上下巻

ファースト・マン 上: 初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生
ファースト・マン 下: 初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生

 

映画化されて話題になったのでご存知の方も少なくないでしょう。
アポロ11号の船長だったニール・アームストロングの伝記。
既に刊行されていた作品に追加事項があり、映画化に合わせた最新版だ。

アポロ好きの私だが、アームストロングはどうにもとっつきにくい人物だった。
月からの帰還後、NASAを辞めてからインタビューにも応じず、隠居したような生活をしていると聞いていた。真面目で気難しい印象。

ところが映画を見て何て人間味に溢れた素晴らしい人物なんだろう!と印象がスッカリ変わってしまった。原作を読みたくなり手に入れた。

上下巻のボリュームで、前半は彼の祖先にまで遡り、細かい日付や数値など羅列されていて少々退屈だが、少し我慢すればそれが無駄ではなくなる!

子供の頃から飛行機好きで、自動車の運転免許を取る前に16歳でパイロットのライセンスを取得。大学に進学後は海軍へ。朝鮮戦争にもパイロットとして駆り出される。帰国後は就職しテストパイロットに。最初に妻ジャネットと結婚し、娘のカレンを授かる。

しかし、カレンが脳幹腫瘍におかされている事が分かる。治療の甲斐なく幼い命が散ってしまった。そのことがきっかけになったとは言い切れないが、宇宙飛行士を目指すことになったニール。NASAのマーキュリー計画が軌道に乗った頃だ。オリジナルセブンのあとのニュー・ナインに選ばれる。

訓練や実験に没頭。ジェミニ8の船長としてランデブーやドッキングを行うが、トラブルに見舞われる。無事に帰還、評価を得る。彼が技術者、テストパイロットとしてとても優秀だったことを初めて知った。

訓練中の事故やトラブルは数知れず。隣人のエド・ホワイトが訓練中に亡くなるのはショックだ。映画ではこのあたり妻たちの苦悩も描かれていた。

いよいよアポロ11号の物語。
着陸船にはニール・アームストロング、バズ・オルドリン。司令船にはマイケル・コリンズが選ばれた。

どちらが先に月面に降りるか…。
バズは自分がファーストマンになることでの名誉を求めて画策しようとするが上手くいかずにイライラ。ニールの自伝なのでニール寄りに良く書くのは当然だとは思うが、あまりにもバズが意地悪で嫌な奴に書かれている。でもバズはバズで父親の期待に応えたいという想いなどもあり、ちょっと気の毒にも感じた。

数々の訓練や多くの人々の努力の甲斐あって、11号が無事に発射される。当時使っていたコンピューターはスマホよりも性能が劣っていたというから恐ろしい事だ。


月周回軌道に到達したときの三人の興奮した様子。録音した会話が文字に起こされているのだが、子供のようにはしゃいでいるのが微笑ましい。「すごいすごい!写真を撮っておこう!」。クレーターを見つけて「あれを目の前で見られるんだ!見事な眺めだ!」と大興奮。

月面への最初の一歩や月面での活動は映像や写真で何度も目にしているかと思うが、実は写真に写っているのはほとんどがバズ。ニールはバイザーに写ったものや鮮明でない写真のみ。要はバズがニールの写真を撮らなかったということ。悪意があったのかどうか…。でも誰が写っていたかよりも、月に到達した証拠を残しておくのが必要。と、ニールは不満なし。この顕示欲のない人物だったからこそ、ファーストマンになれたのだろう。


そして帰還後、45日間世界を歴訪する。
バズが鬱に陥る。原因はアルコール。ニールが上手くスピーチをしたり振る舞っていたのに対し、気軽に話せなかったバズ。ストレスが溜まってお酒に。

ファーストマンはニールという意識。月面着陸の記念切手に「月面に初めて降り立った人間」は『人間たち』が正確なはず、と小さなことにも傷ついた。強欲で勝ち気に見えるバズが弱い面を見せると泣けてくる…。


ニールはNASAを辞めて大学の教授に。大学を辞めたあとは、企業のスポークスマンになったり、共同経営をしたりしていた。

単独インタビューに答えないのは、その記者が嘘をつき、嘘の記事を書くことが何度かあった為とのこと。記者会見なら大勢が同じ事を聞いてるので、嘘を書かれないからとの理由。

多くのトラブルにも巻き込まれた。サインをオークションに出されたり(偽物も多く出回った)、勝手に名前を使われたり、イスラム教に改宗したとの噂など…

なるほど。世間から隠れて生活したくなるのも分かる。

妻ジャネットと離婚した理由も初めて知った。忙しすぎる旦那と共有する時間もなく、思い通りの結婚生活、家族としての時間が持てなかったから。愛想が尽きるのは女性として良く理解できる。

晩年は再婚し、のんびりと過ごしたようだ。

ニールの人生について知った事で、彼の事が大好きになった!

テーマ : 書評
ジャンル : 本・雑誌

「失踪」 ドン・ウィンズロウ

「失踪」 ドン・ウィンズロウ
ドン・ウィンズロウは「犬の力」「ザ・カルテル」他、何冊か読んで唸らされてきたが、こちらも力作。

アメリカの静かな町で5歳の少女ヘイリーが失踪する事件が起きた。事件を担当することになったデッカー刑事。誘拐事件の生存確率は時間が経てば経つほど減ってしまう。総力をあげて捜査するも有力情報もなく、時間が過ぎてゆく。

解決する前にまた少女が失踪する第二の事件が。責任を感じたデッカーは、警察を辞職し自力で捜査を始める。妻との結婚生活は破たん寸前、貯金を取り崩しながら手がかりを求めて愛車とハードボイルド。


警察を離れて勝手に捜査出来るのかな?とちょっとした疑問を抱きつつも、デッカーの執念と怒りに引き込まれてしまう。ヘイリーを大人にしたようなモデルのシー、有名カメラマンのクレイトン、娼館のマダム…誰もかれもが怪しい!

残酷な殺戮シーンやバイオレンスが苦手な私はサスペンスとかミステリーと聞くと身構えてしまうのだが、その辺の描写はほとんどないので安心して読むことができた。

ド派手さはなく割とシンプル。少しくたびれた感じ中年だが正義感に溢れ、暴走もし過ぎず、周りに協力を求める割と真面目なデッカーに魅力がある。応援したくなる感じ。ただ、仕事を辞めてまで捜索するかなぁ…というのが腑に落ちないところはあった。


ただの誘拐事件ではなく、人身売買や未成年の売春などの問題に切り込んでいく作者の手腕が見事でした。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「サラマンダー」 トマス・ウォートン

「サラマンダー」 トマス・ウォートン
18世紀。ロンドンの印刷工フラッドは、スロヴァキアのオストロフ伯爵の城に呼ばれる。
「無限の書」「始まりも終わりもない無限に続く本」を作って欲しいと依頼される。

このお城、からくり仕掛けで大量の本棚や家具などが常に動いており、迷子になりそうな迷宮。そこに自動人形や伯爵の美しい娘イレーナがおり、フラッドは伯爵を満足させるため、本作りに奮闘する。このお城が楽しくって、いつまでもここに居たい!とワクワクさせられた。

フラッドとイレーナは恋に落ち伯爵の目を盗んで愛を交わしていたのだが、伯爵にバレてフラッドは地下に閉じ込められてしまう。11年の時が流れ、救い出されたフラッドの前に現れたのはフラッドの娘と名乗るパイカ。ここから冒険が始まります。

伯爵は亡くなっていたが、幽閉されている間にも「無限の書」を作りたいと構想していたフラッド。無限の書を作るための材料を求めて航海に出る。それはイレーナを探す旅でもあった。

海を漂流し危険にさらされたり、魔法のような活字版を手に入れたり、仲間が増えたり…
次々と場面が変わり、色彩が変化し、ロンドンの霧の中を彷徨っているかのような…掴みどころのないファンタジー。

無限の書は完成したのか?
イレーナには出会えたのか?
童心に返って夢中でページを捲った。

でも子供向けではない。
一人で暗闇も歩けるようになった本好きのアナタにおススメ。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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