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「愛のあとにくるもの」辻仁成

「愛のあとにくるもの」辻仁成
恋愛小説は好んで読まないのだが、辻仁成氏が好きなので彼の作品は読む。

「冷静と情熱のあいだ」のような形式で、韓国の作家と同じ物語を書いている。
辻氏が男性側からの視点で描いているのが本書だ。


潤吾(ユノ)と韓国人留学生・紅(ベニ)の物語。
若い2人は言葉や文化の違いも乗り越えて愛を育む。やがて同棲も始めるが、生活費やデート代を稼ぐためにバイトに明け暮れる潤吾。孤独や差別を感じ、寂しさが募る紅。好きなのにすれ違い、心の距離が広がってしまう。やがて紅は彼のもとを去る。

月日が経ち、潤吾は作家になっていた。2人のことを綴った小説がヒットし、韓国でも翻訳されサイン会を行う事になった。

潤吾の担当編集者・カンナは元カノ。未だに紅のことが忘れられない潤吾に、自分と復縁して欲しい!とグイグイ迫り、韓国にも付いてくる。潤吾は韓国で紅との再会を期待するのだが…


若い頃の恋愛をいつまでも引きずっていて、優柔不断な潤吾にはイライラさせられるし、紅の我がままで気が強すぎるところは全く共感出来ないし…。

私、恋愛小説ダメだわ…。と思ったが、
最後の最後で2人の気持ちが通じ合ったような爽やかな風が感じられて、モヤモヤがチャラになった。

紅は日本でも韓国でもランニングをしており、延々走っている。
私も風を受けて走りたくなった。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「マイナス・ゼロ」広瀬正

「マイナス・ゼロ」広瀬正
8年くらい前に読んでいるはずなのに、前半部分しか記憶がないので再読。
昭和45年代に書かれたSF小説なのに、今読んでも度肝を抜かれる面白さ!トリック!

1945年の東京。空襲のさなか、浜田少年は息絶えようとする隣人の「先生」から奇妙な頼まれごとをする。18年後の今日、ここに来てほしい、というのだ。そして約束の日、約束の場所で彼が目にした不思議な機械―それは「先生」が密かに開発したタイムマシンだった。時を超え「昭和」の東京を旅する浜田が見たものは?


昭和20年の戦争真っただ中から現代(昭和38年)、昭和7年と舞台が変わるのだが、当時の通貨や質素な暮らしぶり、主人公が足を運ぶ銀座の街並みなどの描写が丁寧に書かれており、ノスタルジーを楽しめる。翻訳物と違って、これは日本人だからこその楽しみ方だ。

主人公の浜田が昭和7年に世話になった「カシラ一家」がこれまた良い人たちで。賭け事&お酒大好きのカシラを筆頭に、人のいいおかみさん、長男のタカシは秀才タイプ、幼い次男のオヤブン。そうそう!この物語には「悪者」がいないのだ。みんな愛嬌があって良い人たちばかり。

ミステリーのようなワクワク感もあるが、恋愛やユーモアもあり、SFファンでなくともおススメできる。しかし多少、時代遅れの言葉遣いや表現があるので、これが気になると読みにくいかもしれない。

タイムパラドックス無視の強引さも勢いで引っ張り、最後の最後で収束。思わず唸り、最初のページに戻り…また唸り。混乱する。


タイムトラベル、タイムマシンをネタにした物語は世界中にたくさんあるが、これは日本SFのタイムトラベル小説として最高傑作ではないだろうか。なぜかA.E.ヴァン・ヴォークトの短編「消されし時を求めて」を思い出した。タイムトラベルのトリックが好きで繰り返し読んでいるのだが、本書もそんな一冊になりそうだ。

テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

「ザ・カルテル (上) (下)」ドン・ウィンズロウ

「ザ・カルテル (上) (下)」ドン・ウィンズロウ
   
初めてドン・ウィンズロウの作品を読んだのは、「シブミ」(トレヴェニアン)の前日譚でもある「サトリ」だった。それから何冊か彼の著書を読んだ。

中でも「犬の力」には圧倒された。麻薬カルテルの事に知識も興味もなかったのに、引きずり込まれるようにむさぼり読んだ。その続編である「ザ・カルテル」。文庫本上下巻で一冊が600ページ越え!通勤中に読むには重い…でも早く読みたくて、毎日通勤中の電車で居眠りもせずに読んだ。


「犬の力」では、メキシコの麻薬王アダン・バレーラと捜査官アート・ケラーによる果てしなき戦いが繰り広げられた。続編の本書では、ケラーにより刑務所に送り込まれたバレーラが脱獄し、新たな抗争がスタート。

とにかく!メキシコが腐敗し過ぎている!政府も警察も麻薬カルテルと組んでいる。殺人が日常茶飯事、女子供も問わず何の関係のない人々が殺される血みどろの街。バイオレンスや人が沢山死ぬ話が苦手な私だが、麻痺してしまうほどの死体の数…。一つの街が機能しなくなって廃墟になってしまうほどだ。しかし賄賂を断っても殺される。片方のカルテルの味方になると、敵対するカルテルに殺される!どうしようもないじゃないか!

ノンフィクションではなく、実際に起きた事件などを元に書かれているという。巻頭には消された消えたジャーナリストたちの名前が並んでいる。ウィンズロウのメッセージ…なんて言うと軽くなってしまいそうだ。力のこもった怒りが伝わってくるのだ。

カルテルの数が増えて対立も増加、登場人物も多いもんだから混乱しそうになるが、一気に読む。キャラが個性的なので次第に頭に入ってくる。

「悪」に屈しない女性たちも登場する。他の小説なら活躍してカッコよく収める姿もあるだろうが、ここではそうもいかない。捕まれば強姦され切り刻まれる。「早く逃げて!」

身近な仲間に裏切られたり、ちょっと油断した隙に殺されてしまう…。拷問の末、見せしめの為に首をはねられバラバラにされ腹をさばかれ…。次々と主要な登場人物たちが姿を消してゆく。

こんなに残虐で残酷なのに、家族の事になると人が変わってしまうナルコ(麻薬密輸人)。一人一人にスポットを当てて造形を深くしていくので、悪者にも感情移入してしまう。複雑。


どこに着地点があるのかなんて、余計な心配は無用。
長きに渡るアダンとケラーの戦いの終焉は、体の力が抜けてしまうような切なさで終わってしまった。虚しさと悲しみを感じるのに、もっともっと読んでいたいと思ってしまう。

変わって欲しいと切に願うが、麻薬戦争は永遠に終わらないのだろう。


今年読んだ中で、1,2位を争う傑作。
「犬の力」を読んでから読むのがおススメ。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「アンドロメダ病原体」マイクル・クライトン

「アンドロメダ病原体」マイクル・クライトン
学生時代にSFにハマり読み漁っていた中で、未読だった1冊。
時代を感じる表紙だけど、これがいいんだ~
古本で手に入れてやっと読むことができた。

SF細菌ミステリー?といったところか。
戦う相手は墜落した衛星に付いていた未知の病原体!

墜落した衛星を回収しに行こうとしたところ、近くの街の人々が謎の死をとげていた。生き残ったのは赤ん坊と老人の2人。科学者たちが集結し、謎を解明していく。

ドキュメンタリーのように淡々と展開していく。専門用語は難しいから流し読み。「アンドロメダ病原体」と名付けられた細菌を研究する秘密基地みたいな隔離施設も隙がなく完璧…に思えたが、人間や機械にもミスがあって、ヒヤリとする場面も。

これが日本では1970年代に出版されているから驚きだ。パンデミック小説はたくさん出版されているし多少古臭さは感じるが、十分に読みごたえはある。

ただ、最後があっさり終わってしまって、あれ???余韻が…ない。のが残念だったなぁ。


あ!翻訳が浅倉さんだ!(今気づいた)

テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

「天国でまた会おう(上)(下)」ピエール・ルメートル

「天国でまた会おう(上)(下)」ピエール・ルメートル
  


「その女、アレックス」のピエール・ルメートルが書いた文芸作品。
ミステリーのルメートルに期待していたので、正直戸惑う。
登場人物への感情移入がしづらく、読みにくく感じた。


第一次世界大戦後期、もう戦争は終わるだろう…という空気の中、アルベールは上官プラデルの悪事を目撃してしまう。口封じに生き埋めにされてしまうが、エドゥアールに救い出される。しかし、エドゥアールは顎を失う大けがをしてしまう。

戦争が終わったが、元の生活に戻れる訳ではない。仕事も失いお金もない生活で、エドゥアールは顏の再生手術を拒否し、アルベールは命の恩人であるエドゥアールに献身的に付きそう。二人は貧乏暮らしの中で、一発逆転の詐欺を計画する…


上官のプラデルが憎たらしくて嫌な奴で!でも不思議と魅力がある気になるイケメン。
エドゥアールの父親や姉などもいいキャラで、人間模様は良く描かれており、その辺はルメートルだな、と感じる。

しかし如何せん、、私は退屈に感じてしまった。
戦争の傷跡をずっと引きずった暗い雰囲気が重苦しく、しんどかった。

“ピエール・ルメートル”と意識せずに読むのが良いかもしれません。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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