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「パッサジオ」辻仁成

「パッサジオ」辻仁成
ロックミュージシャンのミハラは歌えなくなってしまった。歌おうとすると喉が傷んで声が出ない。コンサートツアー中であるにも関わらず、追いつめられて失踪してしまう。

ヴォイストレーナの美里と出会い、彼女の祖父が研究しているDNAミュージックに関わることに。DNAミュージックとは、一人ひとりのDNAから作り出された音楽を患者に聞かせると、細胞が活性化し、不老不死が叶うかもしれないという研究なのだ。


美里の祖父の妻は植物人間状態だが、DNAミュージックを聞かせることで寿命が延びているという。それが幸せなことなのだろうか?それでも大切な人には生きていて欲しいのか?


ミハラは孤児院で育ち、美しい声を見出され、孤児院の合唱団でボーイソプラノを担当する。そこで生きる意味を見出すが、声変わりしてから自分は必要とされていないと感じるように。

プロのミュージシャンになり人気を得るも、劣化する自分の声を機材などのせいにし、繰り返されるコンサートに歌う意味を見出せなくなってしまう。そんな心の葛藤が上手く描かれていた。


「パッサジオ」(通過点)を乗り越えて、ミハラが辿り着いた場所は…

歌う事の意味、楽しさ、苦悩…
音楽業界の裏側やミュージシャンの苦悩が描けるのは辻さんならでは。


ページ数も少ないため深みが足りない感じもしたが、考えさせられる内容だった。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「ずんが島漂流記」 椎名誠

「ずんが島漂流記」 椎名誠
少年たちの海洋漂流記。

おじいさんから聞いた話で…と始まるので、椎名さんのおじいちゃんの実話かと思ったらファンタジーだった。

とある南の島に暮らす3人の少年と1人の少女が「歩く魚」を探しにカヌーで冒険に出ることに。水や食料を調達し、親に内緒で海に出た。嵐に巻き込まれたり、無人島で生活したり…危険もあるはずだが、安心して読める冒険物語だ。

手作りの銛で魚を捕ったり、ガラス玉で火を起こしたり、協力しあってサバイバル生活をしていく。

シーナワールド満載の、かなりゆるゆるした冒険なので、物足りなさを感じるかもしれない。でも、適度なハラハラドキドキが南の温かな海洋の雰囲気もあって心地よいのだ。

あっけなく終わってしまったが、めでたしめでたしな気持ちの良いお話しだった。
ジュブナイル小説として読むといいかも。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「明日の約束」辻仁成

「明日の約束」辻仁成
不思議な感覚の短編集。
どれも舞台は日本ではないどこか。

「ポスト」いつも同じ時間に郵便局に現れる女にいつしか取りつかれてしまう
「明日の約束」ボランティア医師として内紛地域に向かったところ、途中でゲリラに襲われ、未開の村で生活することに。
「ピジョンゲーム」鳩と妻と。
「隠しきれないもの」少年の目から見た家族の闇。
「歌どろぼう」歌が歌えなくなってしまう。夫婦の間にあったもの。

おまけのあとがき。

好きなお話が多かった。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「死の鳥」 ハーラン エリスン

死の鳥
ハーラン・エリスン初体験。
存在はもちろん知っていたが今まで読むきっかけがなく、今回初めて短編集を読んだ。

SFというカテゴリにおさめられているが、私が今まで読んできた誰にも似ていない。
全体的に乱暴で残酷、黒々とした不快感をまとっているように感じた。それなのに目が離せないのだ。小説の中でエリスンが叫び、吠え、追いかけてくる。何なのだ。この作家は。

しかも収録されている作品のほとんどがヒューゴー賞、ネビュラ賞、エドガー賞など由緒ある賞を獲得しているのだ。でも好みが非常に分かれる作家だと思う。

収録されているタイトルがこの通り。インパクトあり。
・「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった
・竜討つものにまぼろしを
・おれには口がない、それでもおれは叫ぶ
・プリティ・マギー・マネーアイズ
・世界の縁にたつ都市をさまよう者
・死の鳥
・鞭打たれた犬たちのうめき
・北緯38度54分、西経77度0分13秒 ランゲルハンス島沖を漂流中
・ジェフティは五つ
・ソフト・モンキー


最後の2作品は奔放さが抑えられており、ちょっといい話し。
同じ作者が書いたとは思えないほどの温もりを感じる。

「ジェフティは五つ」は仲良しだったジェフティが何年経っても5歳のままというお話し。
幼馴染みのジェフティは、ぼくが大人になっても5歳のまま。両親は何年も何年も成長しない子供相手の生活にうんざり諦めモード。ぼくは、大人になってもジェフティと映画に行ったり一緒に遊んでいる。

ある日、子供の頃に聞いていたラジオドラマのプレゼント?のバッチを見せてもらう。しかし、その番組は子供の頃に放送されていたはず。再放送でもなさそうだ…。ファンタジーテイストの優しい空気が包み込む。

アメリカの古いラジオドラマや映画、小説のタイトルが沢山出てくるのだが、知っているものが一つもない。当時を知っている人ならば哀愁も感じられるのだろうなぁ。


「ソフト・モンキー」はニューヨークの路上で暮らすバッグ・レディ(女性の浮浪者
)が殺人現場を目撃してしまい、犯人たちに追われる。街を知り尽くしている彼女は巧みに隠れ、逃げ切ったかと思ったのだが…。寓話のような物語。



それでも印象に残ったのが表題作の「死の鳥」。
地球を舞台にした神(異星人?)の戦い。
途中現れるテスト問題。????
戸惑いながらも理解できないながらも、壮大な創世記からの物語に圧倒された。



学生時代にでも出会っていたら夢中になっていたかもしれない。
今読むには負のパワーが漲り過ぎていて、少々しんどい(笑)
でも、今出会えて良かった。

テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

「クロックワーク・ロケット」グレッグ イーガン

クロックワーク・ロケット
ずっと読みたくて気になってたんだけど…
イーガンの三部作を理解できるか不安で手が出せなかった。
でもやっぱり読みたくて購入してしまった。

丁寧な解説もあるしイラストなども多用されているが、物理学や数学はさっぱり。それでも物語の面白さが抜群!ハードSFなんだけど、ロマンもあり異世界を覗いているワクワクがあり、そして泣ける…。物理なんて分からなくても大丈夫!個人的には去年読んだ「シルトの梯子」よりも読みやすく感じた。


我々の世界とは生態系や物理法則も異なるが、人類に近い存在のような知的生物が暮らす惑星。手足を増やしたり変形したり出来る体を持ち、目は前後に二対ずつ、学習すれば胸の部分に文字を浮かび上がらせることができる。何となくスライム?植物っぽいイメージ。

通常の出産では「双」と呼ばれる男女の双子が2組産まれ、出産した女性は死んでしまう。双のいない単者もいる。女性はパートナーがいなくても出産して死んでしまう事がある。体の扱いが難しい。

そんな世界で農民として大家族で暮らしていたヤルダ(彼女は単者)。父親の勧めで彼女は町の学校に行くことになる。

成長し物理学者となったヤルダは、彼女の住む惑星が滅びる日が近い事を知る。それを回避するために山をロケットとして深宇宙へ飛ばす計画が進む。

この世界では逆ウラシマ効果が発生するので、ロケットの搭乗者たちは高速になればなるほど年を取る。その間、惑星に残っている人たちには時間の経過は僅かなのだ。それを利用して、惑星が滅びる前にロケット内での時間を利用し、科学技術を発展させ救済方法を考えるというのだ。


ヤルダの成長を見守り、ロケットの完成&発射を見守り、彼女に感情移入しながら一緒に旅をする。妨害工作があったり、ほろ苦い恋?のような出会いがあったり、ジェンダー問題、女性差別、独身者や子供を作らないと親戚からうるさく言われる…なと、我々と変わらない部分もあり楽しめる。

続きが読みたくてウズウズ!

テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

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プロフィール

mari

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