「太陽の黄金の林檎」レイ ブラッドベリ

太陽の黄金の林檎
短編22作品が収録されている。
初めてブラッドベリを読んだのは「華氏451度」だったので、最初はSF専業作家だと思っていた。何冊か読むうちに、SFだけでなくファンタジー、ホラーなどジャンルに拘らない作品を書く作家だと知った。この短編集はそんなブラッドベリの魅力がたっぷり詰まった1冊。


印象に残った作品を紹介。


「霧笛」
燈台からの霧笛の音を仲間の声だと思い毎年やってくる恐竜。百万年もの間、孤独に生きてきた太古の生き残りだ。ところが霧笛が止まってしまい怒り狂う恐竜。何でもないような短い物語なのに胸を打たれる。


「四月の魔女」
少女のセシーは自分の意識を人間や動物、植物にまで移す能力を持っている魔女。セシーは他の作品でも登場するので愛着のあるキャラクター。セシーは恋をしたいお年頃で、アンという娘に乗り移りトムとデートする。トムが好きなのはアンであって、セシーじゃない。私を見て!!と切望するが思いは届かず…。


「荒野」
明日、火星に向かう女性。彼氏が火星におり、結婚するために地球を旅立つのだ。彼に会いたい気持ちと火星での生活の不安な気持ち…。その昔、男たちは新天地を求め旅立ち、女たちは後から追いかけていった。いつの時代も変わらないのだ。

火星にいる彼と電話するシーンがあるのだが、声が途切れて会話にならない。火星と電話??なんて言っちゃいけない。これがロマンティックなのだ。


「鉢の底の果物」
知り合いを殺してしまい、証拠隠滅の為に家中の指紋を拭きまくる男の話。拭き過ぎて家中ピカピカに(笑)。男が追いつめられていく様を描くのが上手い。


「二度と見えない」
メキシコからやってきてアメリカで真面目に働いていた男が強制送還されることになった。下宿先のおかみさんとの別れのシーン。英語が得意ではない男「あなたと二度と見えない」。彼が去ったあと、その言葉の意味を理解し、涙するおかみさん…。

「ぬいとり」
刺繍をしている女性たち。何やら時間を気にしている様子。何気ない日常の一コマと思いきや、終末が迫っている話し。限られた文字数の中にグッとドラマが詰まっている。


「サウンド・オブ・サンダー」
映画の原作。以前のタイトルは「雷のような音」だった。ザ・SF。
タイムマシンで過去へ行き、恐竜を狩りに行くツアー会社。歴史を変えてはいけないので、決められたこと以外はしてはいけない厳しい規則がある。死ぬ予定の恐竜しか撃ってはいけない。

一人の男が恐怖により決められた道を外れてしまい、一匹の蝶を踏み殺してしまう。蝶一匹くらい…で、未来が変わってしまう。非SFを読んだあとでこの作品を読むと、ブラッドベリの才能の幅広さに驚くばかりだ。


「山のあなたに」
読み書きの出来ない夫人は、山の向こうの世界に憧れを抱いている。夏休みにやってきた甥っ子に手紙を書いて欲しいとせがむのだが、知り合いがいない…。そこでカタログなどを請求することに。そして次々に届く郵便物に歓喜する夫人。

しかし、夏が終わり甥っ子が帰ってしまった。郵便物が届いても文章が読めない。届く郵便物も次第に減っていく…。とっても切ないお話し。そういえば子供の頃、郵便屋さんが来るのが楽しみだったなぁ。


「発電所」
O・ヘンリー賞受賞作。あとから余韻が滲みてくる。
母親が危篤との知らせを受け、夫と母のもとへ向かう女性。実家までとても遠い。間に合わないかもしれない。気持ちが暗く不安定になり、くたびれてしまうのはとても良く分かる。

嵐を避けるために通りがかった発電所に泊まることに。そこでの一夜が彼女を変えてしまう。何が起きたのか?発電所内の音に耳を傾けているうちに、神がかったような夢を見ているかのような不思議な体験をする。爽快感と幸福感にこちらまで包まれるような気分に。


「ごみ屋」
ごみ収集の仕事をしている男は、自分の仕事に誇りを持っている。ところがある日、もう仕事を辞めたいという。街に原爆が落ちたら無線が入り、死体を集めなくてはならないというのだ。哀しみが覆いかぶさってくるようだ。


「歓迎と別離」
永遠に12歳の少年の物語。似たような成長出来ない少年の小説や漫画もあるが、切なさの中に力強い希望を見出すような描き方が出来るのはブラッドベリならでは。

見た目が子供の為に仕事が出来ない。もちろん両親もいない。そこで生きていく為の仕事を発見した。子供のいない人たちの生活に入り込み、彼らを幸せにするお仕事。しかし数年経ち、周囲の子供と比べて成長しない姿を不審がられるようになると、サヨナラしなくてはならない。その繰り返しの人生。苦し過ぎる。


「太陽の黄金の林檎」
まずタイトルが印象的で美しい。SFというよりお伽話。
地球のエネルギー資源が不足してしまい、代替エネルギーとして太陽の一部を取りに行くという話し。宇宙船で太陽に近づき採取するのだが、まともな感性で読むと非科学的で馬鹿じゃないのみたいな事になってしまう。暑い!熱い!どころのレベルじゃないでしょう!と。

SFを期待して「火星年代記」を初めて読んだ時にも戸惑ったが、ブラッドベリの本質を知るようになってから再読したら、何と美しい物語なのだろう!と感じ方が全く変わってしまった。この作品もそう。

彼の作品を読めば読むほど 奥深さを知り好きになる。

テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

「二人がここにいる不思議」レイ・ブラッドベリ

二人がここにいる不思議
ブラッドベリの短編集。23編。
処分する前に読んでおこうとブラッドベリの本を何冊か読み始めたんだけど、どれもこれも素晴らしい作品。長く愛されていて、これからも愛され続けるであろう作品たち。手放してしまうけれど、何年後かに読み返したくなるかもしれない。タイトルが洒落が効いていたり、意味深なのも楽しい。

表題作の「二人がここにいる不思議」は亡くなった両親とレストランで食事をしているシーン。私はまだ両親が健在だけれど、この気持ちが分かる日がいつか来るかもしれない。

「トインビー・コンベクター」はSFテイスト。タイムマシンで未来に行って戻ってきた人の話しなんだけど、最後にそうきたか~予想外の結末にニヤリとしてしまう。

ホラー?な「階段をのぼって」は想像力がかきたてられる。ゾワッとするけど。
「純自家製本格エジプト・ミイラ」はワクワクするファンタジー。

どれも嫌な後味がなくて、泣きたくなるようなホンワカした気持ちにさせられる。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「瞬きよりも速く」レイ ブラッドベリ

瞬きよりも速く
21の短篇が収録されているボリュームのある1冊。
新装版よりこのイラストの本が好き。

表題作「瞬きよりも速く」をはじめ、タイトルが興味深いものが多い。
「何事もなし、あるいは、何が犬を殺したか」なんて何かと思うよね。
内容も幻想的やSFなのはもちろん、なんてことないような話しなのに語り口やテンポが心地良い。

「九年目の終わりに」「魔女の扉」「失われた街道」が好き。あと「あとがき」。自身の経験が物語になっていくんだね。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「十月の旅人」レイ・ブラッドベリ

十月の旅人
レイ・ブラッドベリの初期の作品10篇が収められた短篇集。

1本目の「十月のゲーム」で心を鷲掴みにされる。ハロウィンの夜に起きた出来事、ホラーなんだけど不思議と嫌な気分にならないのは何故だろう!?ラストに至るまで恐怖を感じなかったからだろうか。

最後の「すると岩が叫んだ」は、戦争でアメリカ人(白人)が滅んでしまった中で生き残っている夫婦が逃亡する物語。最後は死んじゃったのかな…と思うけれど、まるで映画を見ているかのような臨場感。映像が目に浮かぶ。

SFだったりホラーだったりジャンルに拘らない、でもどこかゾックッとさせられる作品たち。それなのに読感がとてもいいんだ。不思議。

天才的なストーリーテラーって、彼のような作家のことをいうのだなぁ、と感心させられた。
最初に読んだのは何年前だろう。年を取って当時よりも深く感じることができたように思う。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「塵よりよみがえり」レイ・ブラッドベリ

塵よりよみがえり
古本の整理をしていて、ブラッドベリはいいかな…と処分対象にしたので再読。
初めてよんだのは「華氏451度」。SF作家だと思っていて、他の作品も読み始めたんだけど、どうも違うぞ?と。

この作品はお化け一族の物語なんだけど、ホラーではなく、描写が細かくて美しい物語。翻訳大変そう。ファンタジーだね。子供の頃のピュアな気持ちも戻れるワクワク感もある。実写じゃなくて繊細なアニメーションで見てみたい。

表紙は「アダムス・ファミリー」で知られるチャールズ・アダムズ。

10年、20年後にまた読み返してみたい。
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