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2008/03/18 / 00:00
トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫 オ 9-10)
ポール・オースター 柴田 元幸 
オースターが体験した、聞いた、ウソのような本当の話しや、彼の若い頃の体験を綴ったエッセイもあり、非常に楽しめた。
まるでオースターの小説を読んでいるかのような、真実とは思えないエピソードの数々。
私なんてそんな不思議な経験をしたこともないし、聞いた事もないのに、何故こんなに多くの不思議が彼に集まるのだろうか。
オースターの子供の頃の事や、売れる前の貧乏話しなど初めて知ることもあり、今まで私が思っていたオースター像がずいぶん変わった。
物静かで大人しめな人なのかと思っていたら、行動力があり、多くの経験を経て今のオースターがあるのだという事が分かった。やっぱりスゴイ人だ。
全体を通して、優しく柔らかな風がふんわり漂っているような文体がたまらなくいい。
2007/02/18 / 12:30
最後の物たちの国で
ポール・オースター 柴田 元幸 Paul Auster
未来でも過去でもなく(少なくともオースター本人は未来でないと言っている)、どことも知れぬ街へ、行方不明の兄を探して辿り着いたアンナ。
その街での暮らしぶりを手紙形式で綴ってゆく。
崩壊し、死が充満している場所。生きてゆく為にはゴミ漁りをしたり、強奪したり、自分の資産を売ってお金にするしかない。しかも、物資も食料も不足している酷い有様だ。
しかし、そんな中で絶望しつつも、生き生きとしているアンナがいるお陰で、陰鬱さが薄れているように感じた。
この小説はオースターっぽくない、と言う声も聞くが、私は実にオースターらしいと思う。現実味があるにも関わらず、寓話的な不思議な雰囲気に包まれており、情景がリアルに目に浮かぶのに、とても遠いモヤっとした場所で起きている物語に思える。
今まで文庫化されたオースター作品はほとんど読んだけれど、私にとって現代の作家でどの作品もハズレのない作家はオースター以外にいない。
2007/01/08 / 11:58
ミスター・ヴァーティゴ
ポール オースター Paul Auster 柴田 元幸
ウォルト少年が、師匠になるイェフーディに出会い、空中浮揚を身に付け、アメリカ中を回り人気者になる。その後も、波乱万丈の人生を歩み、年老いた姿になるまでの物語と言ってしまうと簡単だけど、オースターの小説は、言葉にいい表わせない喪失感と、夢見心地な感覚と、ちょっと優しい気分になれるような満足感がある。
特にこの作品は、空を飛ぶと言うとんでもない事が、さりげなく書かれている事からも、ファンタジー、お伽話のようで、それまでのオースターの作品とは違った雰囲気があって、読みやすく温かみが増しているように感じた。
ウォルトが成長していく様子や、多くの人々との関わり合いと別れ。それだけなのに、なぜこんなにも惹きつけられてしまうのか。
初めてオースターの作品を読んだ時から、私が魅了されているオースター独自の文体のリズム。雰囲気が変わっても、らしさは変わらない。