Entry.
2008/07/22 / 00:00
虚空の眼 (創元推理文庫)
大滝 啓裕 
カリフォルニア州に建造された陽子ビーム偏向装置が突如事故を起こし、8人の男女がまきぞえに。その一人であるジャック・ハミルトンが病院で目覚めるも体には異常はない。しかし、次第に違和感を感じるようになり…。
最初の第二バーブ教が支配する世界が最高に面白い。
現実世界ではなく、他人の精神世界に入ってしまうという設定はユービックにも近いものがある。逃れられない悪夢の連続。怖いんだけど、バカバカしくて笑えてしまうシーンも。家に飲み込まれそうになるところなんか、B級ホラー映画みたいだし。
訳者の大瀧さんのあとがきも興味深い。
偶然にして「ジョーンズの世界」「いたずらの問題」「虚空の眼」と書かれた年代順に再読している。この初期の頃ってプロットもしっかりしてるし、安心して読めるが、逆にちょっぴり物足りなさも。 まぁ、せっかくなので年代順に読んでみようと思う。
ディックは何度読んでも最高に面白い!
2008/06/29 / 00:00
いたずらの問題 (創元SF文庫)
Philip K. Dick 大森 望 
先日、実家に帰省する時のお供にチョイス。前回読んだのは99年だから9年前。全然内容覚えてなくて、ストレイター大佐の銅像にいたずらを・・・くらいしか記憶になかったので、新鮮な気持ちで読めた。しかも面白くて手が止まらない。最近なかなかそこまでの気持ちにさせてくれる本ってないからね。わくわくしながら読んだ。
これは初期の作品で「ジョーンズの世界」と同じ年に描かれている。調べたら、ディック読むのは今年初で、前回読んだのは去年の12月「ジョーンズの世界」だった。同じ流れは感じる。プロットもしっかりしてるし、激しく脱線してしまうこともなくラストもハッピーエンド。それはそれで面白いけど、ハチャメチャなディックも読みたくなるな。
自分がいる世界とは別の世界があって、そこで暮らすことも可能だけど制約の中で生きるのか、自由だけど何もないような地で暮らすのがいいのか。自分が夢遊病者のように知らぬ間に何かしでかしたりしていても気づいてないんじゃないかとか、読後に空想して楽しむひと時が幸せ♪
苦悩し振り回され、でも自分で道を開いて解決しようとする主人公のアレンは、ディック作品の中ではまともな人間に見える。妻の方が臆病で薬なしじゃ精神を保てない弱さがあってディックワールドの住人っぽい。
なんにしてもディックはやっぱり最高だ!何度読んでも何を読んでも最高に面白い。
2007/12/10 / 19:00
ジョーンズの世界
フィリップ・K. ディック 白石 朗 ![]()
保安警察の捜査官がカーニヴァルで出会った奇妙な占い師。“個人の占お断り”―つまり人類の未来だけを占うという、この男がジョーンズだった。一年先までを完壁に予知できる超能力者である。世界政府は彼を即刻監視下におくが、やがて彼の元に人々は集い、政府を脅かす組織にまで発展する。一方、太陽系には〈漂流者〉と呼ばれる謎の物体が飛来していた。ディック50年代の名編。 (「BOOK」データベースより)
以前読んだ時の記憶も、ジョーンズが占いしてるシーンが強烈に残っているだけで、あまりよく覚えてなかったんだけど、内容の説明だけ読んでも、何だかつかみどころがなさそうな内容で、実際、いくつかの物語を並行して読んでいるかのような感覚で、ガッチリとかみ合わず、消化不良で終わってしまった。
つまらなかった訳ではなくて、物語の世界に浸かれなかったというか。
そんなこともあって、これを読んだあと、しばらく続いたディック読みもひと休み。
テンションが下がってしまった。
2007/12/10 / 13:43
タイタンのゲーム・プレーヤー
フィリップ・K. ディック 大森 望 
またまたディック。ディックを再読し始めたら、止まらなくなってきた。
星間戦争に敗れた人類は、ヴァグと呼ばれるタイタン生物に支配されて生活している。人口が少なくさらに、出産できにくくなってしまった世界で、ヴァグのもたらした「ゲーム」で土地を賭けてをプレイしたり、出産の可能性を広げるため、男女のペアを頻繁に入れ替えて試す・・・ということも行われている。
ある日、対戦相手のプレイヤーが殺された事件を発端に、世界が揺らぎ始める・・・。
展開や立場が目まぐるしく変わり、謎解きのサスペンス要素と、足下が崩れてゆくディックワールドが折り重なって、私自身も眩暈を覚えた。スピード感とグルグル廻りながら浮遊する感じが心地よい。
結婚相手がコロコロ変わる中で、ピーターに思いを寄せるフレアの素直な感情や、人間味あふれる「ラシュモア効果」(車や機械が人間のようにしゃべる)など、何気ないやりとりに心を揺さぶられる。
「しゃべる車」で思い出すのが『去年を待ちながら』のラストで、主人公と会話するタクシー。このシーンは大好き。
2007/11/26 / 16:17
2007/11/26 / 16:08
ザップ・ガン
フィリップ・K. ディック 大森 望 
−−2004年、西側陣営と人民東側が新型兵器開発にしのぎを削っていた。西側の兵器ファッション・デザイナー、ラーズは、トランスにより霊感を得、兵器のスケッチを起こす。しかしこの兵器開発も、実は全くのまやかしだった。だが、謎のエイリアン衛星が人類を攻撃してきたとき、彼は東側のデザイナー、リロと手を組み本物の究極兵器ザップ・ガンのデザインにとりかかる!−−
むしょうにディックを読みたくなる事がある。今回も読みたくて読みたくてウズウズして、久々に読んだんだけど、やっぱりいい。
ディック自身はこの作品はいまいちで、前半は読めたもんじゃないと言っているけれど、正直内容云々とか構成がどうだとか関係ない。
ディックワールドに浸っているだけで、心地いいのだ。目茶苦茶な感じがいいのだ。
普通の?SFだったら、襲ってくるエイリアンと戦う展開になっていくんだろうけど、その辺は結構あっさりしてる。
そして、エリートであるはずのラーズの苦悩や不安、恐れは我々と変わらない。その弱さや脆さはなんとも情けない姿ではあるけれど、そこに共感する事でなんだか励まされちゃったりもするのだ。
2007/06/21 / 14:53
最後から二番目の真実
フィリップ K.ディック 佐藤 龍雄
サンリオ版とは別に創元SFから新訳で再版されたので、改めて読んでみた。前回読んだのが2000年だから7年ぶりか。
核戦争を逃れて地下に移り住み、戦闘用ロボットの生産に追われる人々。しかし、戦争は10年以上前に終わっており、少数のエリートのみが地上に住んで、地下に住む人々向けに放送する映像を偽造していた…。
近頃、企業や政治の偽造とか、不正が多い世の中で、何を信用したらいいいのか、正しい情報を探すほうが難しいんじゃないかって感じになってるけど、これってディックの世界みたいだな。真実は自分で探して掴まなくちゃいけない。今生きている世界は地上だけど、地下に閉じ込められている(情報が遮断されている)のと一緒だもの。
やっぱりディックは1番好きな作家。これは揺るぎない。
2007/01/07 / 00:00
戦争が終り、世界の終りが始まった
3年くらい前に読んでいたんだけど、あまり良く憶えていなかったので、再読した。
SFではない純文学と言っても、やはりディックらしさは存分に出ている。それぞれのキャラクターがイヤになるくらい生々しく、描かれている。
舞台は、1950年代。北米カリフォルニア。
チャーリー・ヒューム、フェイ・ヒューム夫妻に、フェイの兄のジャック・イシドール、近隣に引っ越してきた魅力的な夫婦のネーサン・アンティールとグエン。
彼らの何気ない日常が、淡々と静かに崩壊していく。
フェイは不愉快になるくらい言葉使いも悪いし、自己チューで、ワガママで、自分が一番でなければ気が済まなくて、コロコロと気分が入れ替わり、主婦業もろくに出来ず、本当に嫌な奴だ。そんな女に、最初は嫌気がさしていたネーサンが惹かれていくのも理解不能だったけれど、フェイに、他人とは違う魅力がある事も確かだ。可哀想なのは、ネーサンの妻グエンと、フェイの夫のチャーリーだ。巻き添えを食っているとしかいいようがないけれど、彼らもまた、自分の生き方をうまく変えようと思えば出来たのではないか、とも思える。
こんな人々の中にいると、ジャックもさほど狂っているとも思えないから不思議だ。
SFではない小説を読む事で、ディックの奥深さが一層理解出来るのではないかと思う。煌びやかなイメージのSFではなく、人間の本質を表現している作家だから。
2006/08/10 / 15:56
アルベマス
フィリップ・K. ディック Philip K. Dick 大瀧 啓裕 ![]()
「フィリップ・K・ディック 我が生涯の弁明」「ヴァリス」「聖なる侵入」に続き「アルベマス」を再読した。10年ぶり。当時の感想を書きとめてあったノートを読んだところ「ディックの宗教感が理解出来ない。ヴァリスの原型になった小説と言うので難しいと思ったが、読みやすかった。」などと書かれていた。
確かに、既に関連している3冊を読んでいる事もあるけれど、ディックの神秘体験以前の"SF"寄りで、宗教色も薄く"小説"として楽しむ事が出来たように思う。
最初に挙げた3冊と似通っている描写や、ディックの体験に基づく部分が書き込まれていたり、改めてディックの体験した事がディックにとって重要な事で、それを表現する為に多くの時間と言葉が必要であった事が分かる。
ディックは大好きなのに、「ヴァリス」「聖なる侵入」がちっとも面白さが分からず、挫折した経緯があるので、10年前には理解出来なかった事が、ようやく私の中で解決し、受け止める事が出来るようになった。
内容としては突っ込みたくなるような部分もあるけれど、ラストがいい。
懲役50年の刑にされてしまい、労働治療と言う肉体労働をするはめになったフィルが、作業場でレオンと言う男と語り合うシーン。未来に繋がる希望を見い出す事ができる。ディックの後期の小説は、作中ではハッピーエンドではないけれど、次に繋がる希望が残されているものが多い気がする。
今までも一番好きな作家であったけれど、彼の事をさらに知る事でますます好きになった。
2006/07/26 / 16:27
聖なる侵入
フィリップ・K・ディック 大滝 啓裕 
「ヴァリス」に続いて、「聖なる侵入」を約10年ぶりに再読。
「ヴァリス」同様、当時はさっぱり理解できず、とりあえず最後まで読みきったが楽しめなかった一冊。内容も全然覚えていないような状態だったので、まっさらな気持ちで読む事が出来た。
「ヴァリス」を展開させた新たな物語と言うふうに紹介されているが、全く違うものでもないし、単純に続編と言うわけでもない。これ一冊でも小説として読むには問題ないが、やはり続けて読む事で理解度が増すと思う。
私自信、「我が生涯の弁明」「ヴァリス」「聖なる侵入」と続けて読む事で、ようやくこの世界観を楽しんで読めるようになった。でも、理解して人に説明できる程までには至っていない。
しかし、ディックがどういう思いで自分の体験した事、考えた事を表現しようとしていたのか、分かるようになってきて嬉しいし、そのエネルギーの大きさにも圧倒される。
続けて「アルベマス」を読む予定。