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「プレイヤー・ピアノ」カート・ヴォネガット

プレイヤー・ピアノ (ハヤカワ文庫SF)
Kurt,Jr. Vonnegut 浅倉 久志
415011501X一度読み始めて、他に読みたい本が出てきた為に一時中断。
その後も、600ページを越える厚みの前に手が出せず、しばらく放置してあった。
しかし、読み始めたら本の重さも長さも気にならず、一気読みしてしまう魅力溢れる作品だった。

これは、1952年のヴォネガットの処女作。
今まで何冊か彼の作品を読んできたが、時間軸が大きく動いたりする事もなく、イメージもしやすい内容で、非常に読みやすかった。


機械に人々が管理され、技術も自動化された世界の物語。
格差が激しく、職人たちも仕事を機械に奪われてしまい、生活は保障されているものの、生き甲斐のない社会。
主人公のポール・プロテュースは、世の中を動かすことが出来る程の地位にあるものの、出世欲も薄く、この世界のあり方に疑問を持ち、苦悩する。流されているだけのように見えるが、そんな弱さも含めて、共感できるキャラクターだ。
ふと、ディックの作品に登場する権威もあるのに弱く脆く、SFのスーパーヒーローになれない主人公達を思い出した。


ヴォネガットの小説には、自分の格言にしたくなるようなグッとくるセリフがある。

シャーが声をかけた女性の夫は小説家見習い。しかし、本を出版するのにも難儀な監修があって、それを通らないと日の目を見ない。しかも彼の小説のテーマは「機械排斥」!

「~だれかが不適応のままでいなくちゃいけない。だれかこの社会になじめないものがいて、人間がいまどこにいるのか、どこへ行こうとしているのか、なぜそこへ行こうとしているのかに、疑問をぶつけなくちゃいけない。それが彼の小説の難点でした。~」(p345)


幽霊シャツ党員の声明文
「~不完全さにも長所はあるにちがいない。なぜな人間は不完全であり、かつ、人間は神の創造物であるから。謙虚さにも長所はあるにちがいない。なぜなら人間は謙虚であり、かつ、人間は神の創造物であるから。非効率性にも長所はあるにちがいない。なぜなら人間は非効率的であり、かつ、人間は神の創造物であるから。賢さのあとにくる愚かさにも長所はあるにちがいない。なぜなら人間は賢いときもあれば愚かなときもあり、かつ、人間は神の創造物であるから。~」(p424)

引用した前後も読まないと言葉が足りないけれど、今にも通ずるものがあるだろう。
完璧な人間などいないし、不完全であるがゆえに学び、成長してゆく。

学生時代、人間関係が上手くいなかったり、逃げ場がなくて迷っていた事があった。
自分は落ちこぼれで、何をやっても上手くいかず、ダメな人間だと。
その時にディックの小説にハマり、癒され・・・さらに迷走していた(笑)
ディックだけじゃなくて、ヴォネガットにももっと早く出会っていたら、どんな影響を受けただろう。

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