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「J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド」

J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド
J.G. バラード James Graham Ballard 木原 善彦
4826990367バラードファンは必読!
1963年から1995年までに書かれた書評、エッセイなどをまとめたもので、小説以外での彼のことばを読む事が出来る貴重なテキストだ。
映画、伝記、視覚芸術、作家・・・などに分けられたそれらの中で、知らない名称や人物について古いものもあるため、イメージしにくいものもあるが、逆に興味を持ち、もっと知りたい、映画ならば見てみたいと思わされるものも多数あった。

特に私が好きなサルヴァドール・ダリやフランツ・カフカ、ウィリアム・バローズについては、彼の「意見」「想い入れ」を知る事が出来て非常に嬉しい。
また「サイエンス・フィクション」の中に収められているエッセイ等は彼の作品を理解するうえでも、非常に興味深い。
彼が目指した「内宇宙」はこう言う事だったのか。と改めて知る事が出来た。バラードファンに限らず、SFファンにも読んで欲しい。


中でも一番、心に残ったのが最後に収められている自伝「私の終戦」。
バラードがイギリス人で、上海で育ったのは知っていたけれど、自伝的映画と言われる「太陽の帝国」を見ていない私にはショッキングな内容だった。
彼が第2次世界大戦中に、日本軍による収容所に2年半もの間抑留されていた事は知らなかった。

数年前から、第2次世界大戦で原爆を落とされた日本は被害者だ。と子供の頃から刷り込まれていた事がすべてではなく、加害国としての歴史が非常に多い事について、もっと知りたいと思っていた。確かに、多くの人が犠牲となり、原爆がきっかけで降伏する事にも繋がったとは思うが、それ以前からの他国への侵略行為や残虐行為は、教科書でもきちんと教えられていなかったように感じていた。

日本に限らず、世界の歴史を自分はあまりにも知らな過ぎ、戦争を知らずに育ってきた。ただ「平和」を望み、訴えるだけではなく「事実」に目を向ける事も必要だ。
「私の終戦」はまるで小説のように読めてしまったけれど、これはバラードが体験した「事実」なのだ。

最後に書かれている
「広島と長崎はアメリカの戦争犯罪だという主張は、日本人に対して不幸な影響を与えている。日本人は国家として自分たちが犯した残虐行為に向き合った事は一度もないし、私たちが広島と長崎を思い出して慚愧に絶えず頭を垂れている間は、彼らの反省はないだろう。」(P147)
まさにその通りではないだろうか。
すべてに当てはまるとは思わないが、加害者は自分のした行為を忘れてしまったり、謝罪すれば終わりと言う意識が強いが、被害者は永遠に忘れる事は出来ないし、心から許す事は出来ないのではないかと思う。

今までは「太陽の帝国」はバラードが原作だけれど、SFじゃないし・・・と思って見た事がなかったが、これを読んでから是非見てみたいと思うようになった。

もっと、バラードの「ことば」を聞きたい。現在はどのような事を考えているのだろうか。

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